どちらも虚証向けの風邪薬のイメージがある漢方ですがどのような違いがあるのでしょうか
どっちも『蘇』って漢字が使われてるね
『蘇』以外の『香』、『参』が重要なキーワードかもしれないね
構成生薬の違い
香蘇散
- 香附子(コウブシ)
- 蘇葉(ソヨウ)
- 陳皮(チンピ)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
参蘇飲
- 人参(ニンジン)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 半夏(ハンゲ)
- 陳皮(チンピ)
- 葛根(カッコン)
- 桔梗(キキョウ)
- 枳実(キジツ)
- 蘇葉(ソヨウ)
- 前胡(ゼンコ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
- 甘草(カンゾウ)
香蘇散を構成する生薬のうち香附子以外の4生薬はすべて参蘇飲にも入っています。
香蘇散と参蘇飲の使い分け
2つの方剤には名前の由来となっている主薬の生薬がそれぞれ2種類あります
香蘇散は香附子と蘇葉
参蘇飲は人参と蘇葉
蘇葉は共通の生薬ですから使い分けを考えるにあたっては香附子と人参の違いについて理解する必要があります。
香附子
カヤツリグサ科ハマスゲの根茎を乾燥させたものです。
ハマスゲという植物は芝生を枯らしてしまったり、アスファルトを押し上げてしまうほど生育力の強い雑草のひとつです。
植物として厄介者として扱われるハマスゲですが生薬としての香附子は様々な方剤の主薬となる重要な生薬のひとつです。アーユルヴェーダ(インド医学)においても重要な薬物のひとつです。
東洋医学的には理気薬に分類されている生薬です。
調経作用、止痛作用などがあることから婦人科用の方剤にも配合されています。
人参
ウコギ科オタネニンジンの根の乾燥させたものです。
食用として用いられる人参はセリ科の植物で、薬用人参の根に似ている形であることからニンジンという名前が付いたそうです。薬用人参は日本においては朝鮮人参と言われることが多いです。
補気薬に分類される生薬で、補気剤と呼ばれる方剤には必ずといっていいほど入っている生薬です。
まとめ
香附子は理気作用、人参は補気作用をもつ生薬であるということがわかりました。
このことから香蘇散は気鬱傾向のある人の風邪症状に適しており、参蘇飲は体力のない人の風邪症状や長引く風邪に用いられることが多いです。
また参蘇飲には解表、止咳、去痰作用のある前胡や去痰作用のある半夏、止咳、去痰、排膿作用のある桔梗が入っているため風邪の諸症状にも効果がありますから単独でも用いられやすいです。
香蘇散は5種類の生薬で構成される方剤ですので風邪症状に用いる場合には他の方剤と組み合わせて用いるのがよいです。