大?小?
大・小がなにを意味しているか説明していくね
柴胡剤
ふたつの漢方に共通しているのがどちらも柴胡(さいこ)という生薬が入っている方剤であるということです。
厳密にいうと柴胡剤とは柴胡と黄芩(おうごん)の2味が主薬となっている方剤を指します。
小柴胡湯、大柴胡湯以外にも 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) などが挙げられます。 黄芩は入っていませんが四逆散も柴胡剤のひとつに分類されます。
柴胡剤の主な効能として抗炎症作用があります。各種炎症に効果がありますので様々な疾患に用いられます。
柴胡の成分であるサイコサポニンの骨格はステロイドに似ており、ステロイドの様な副作用はありませんが、ステロイドと同様の効果を期待することができます。
また柴胡は抗ストレス作用も有しているため、精神的な症状にも効果があります。
構成生薬の違い
小柴胡湯
- 柴胡(サイコ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 半夏(ハンゲ)
- 人参(ニンジン)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
大柴胡湯
- 柴胡(サイコ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 半夏(ハンゲ)
- 枳実(キジツ)
- 大黄(ダイオウ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
下線を引いたものが共通している生薬です。
小柴胡湯には共通している生薬の他に人参・甘草の2種類の生薬が入っています。
人参は補気作用の強い生薬で胃腸機能を高め、体を元気を与えます。
甘草は数多くの漢方方剤に入っている生薬で、各種生薬の調和をとる役割があるとされています。
また甘草の主成分であるグリチルリチンには抗炎症、抗アレルギー、鎮咳・去痰作用などさまざまな薬効が報告されています。ただし甘草には副作用も報告されているので注意が必要です。
大柴胡湯には共通している生薬の他に枳実・大黄・芍薬が入っています。
枳実は理気、健胃、去痰、便通作用のある生薬です。
大黄は瀉下作用のある生薬で便秘を改善します。また抗うつ作用があるとも言われています。
芍薬は補血、鎮痛、鎮痙、緩和作用のある生薬です。
小柴胡湯と大柴胡湯の使い分け
一般的な漢方の解説書には小柴胡湯は虚証向け、大柴胡湯は実証向けという記載をよく見かけます。
この意味は構成生薬の違いから説明することができます。
小柴胡湯には大柴胡湯には入っていない人参という生薬が入っています。
人参は補気作用のある生薬なのでこの点で大柴胡湯よりも虚証向けの方剤であるということがわかります。
大柴胡湯には小柴胡湯には入っていない枳実、大黄、芍薬が入っています。
柴胡剤の使用目標である『胸脇苦満』を改善してくれる生薬が追加で入っているともいえます。
胸脇苦満があるということは肝気鬱結ということなので理気作用のある枳実が有効です。
また枳実、大黄により便通が促され腹部の張りが抑えられます。芍薬は筋肉の緊張を解いてくれる生薬なので季肋部の張り、痛みを改善してくれます。
大黄の抗うつ作用も柴胡剤の抗ストレス作用を助けてくれていると考えられます。
以上のことより
小柴胡湯は虚証(やせ型)の方や、風邪で体力が落ちた人や食欲が落ちた人などに適しています。
大柴胡湯は柴胡剤として効果が小柴胡湯よりも強いので、胸脇苦満の強い方や各種症状の強い方、便秘がある実証(がっちり体型)向けの方の方剤といえます。