国民の約5人に1人は睡眠に問題を抱えていると言われています。
睡眠薬を使うのは怖い。使ったら癖になってやめられなくなる。
そんなネガティブなイメージをお持ちの方も多いと思います。
そんな方はまず漢方薬で睡眠改善を目指してみてはいかがでしょうか?
不眠症とは
夜寝つきが悪い、睡眠が維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。
不眠症のタイプ
①入眠障害
寝ようと思ってもなかなか寝付けないタイプです。
②中途覚醒
睡眠中に何度も目が覚めてしまうタイプです。泌尿器の疾患による夜間頻尿が原因となる場合もあります。
③早期覚醒
希望の起床時間よりも早くに目が覚めてしまい、その後眠れないタイプです。
④熟眠障害
睡眠時間は足りているが、眠りが浅く十分寝た気がしないタイプです。
不眠症に効果のある漢方薬は?
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
主薬である酸棗仁の名前から名付けられた漢方薬です。
- 酸棗仁(サンソウニン)
- 知母( チモ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 川きゅう(センキュウ)
- 甘草(カンゾウ)
上記5種類の生薬から構成されています。
睡眠の質を改善させる効果があるとされています。
中途覚醒や熟眠障害により効果的な漢方薬です。
帰脾湯(きひとう)
酸棗仁湯と同様に不眠に効果のある酸棗仁が入っている漢方薬です。
酸棗仁の量は酸棗仁湯よりは少なめです。
- 人参(ニンジン)
- 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
- 酸棗仁(サンソウニン)
- 竜眼(リュウガン)
- 遠志(オンジ)
- 当帰(トウキ)
- 黄耆(オウギ)
- 木香(モッコウ)
上記12種類の生薬から構成されています。
不眠以外にも貧血・精神不安・緊張などに効果がある漢方薬です。
加味帰脾湯
帰脾湯に柴胡・山梔子が加味された方剤です。
帰脾湯と同様に不眠に対して効果があります。
柴胡・山梔子は清熱作用のある生薬なのでイライラ・のぼせ・ほてりなどがある方には加味帰脾湯のほうが効果的です。
抑肝散
いままで紹介してきたものと異なり酸棗仁は入っていない方剤です。
- 柴胡(サイコ)
- 釣藤鈎(チョウトウコウ)
- 蒼朮(ソウジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 当帰(トウキ)
- 川きゅう(センキュウ)
- 甘草(カンゾウ)
以上7種類の生薬から構成されています。
神経の高ぶりを鎮める効果がある漢方薬です。
神経過敏、イライラがある不眠症の方(主に入眠障害)に効果的です。
また子供の夜泣きにも効果的です。
抑肝散に半夏・陳皮の2種類を加えた抑肝散加陳皮半夏という方剤もあります。
虚証、胃腸が弱いかたにはこちらのほうが適しています。
また女性の方で精神不安・イライラなど更年期症状がある方の不眠には加味逍遥散もおすすめです。
加味逍遥散は抑肝散に比べ抗うつ作用があるため熟眠障害・早期覚醒に効果的です。
黄連解毒湯
皮膚炎、高血圧、胃炎、出血、二日酔いなどさまざまな症状に使われる方剤ですが不眠にも効果があります。
- 黄連(オウレン)
- 黄ごん(オウゴン)
- 黄柏(オウバク)
- 山梔子(サンシシ)
以上4つの生薬から構成されています。
すべて清熱作用のある生薬なので、イライラ・興奮する、のぼせ・ほてりのある方の不眠に効果的です。主に入眠障害に使用されます。
さらに便秘がある方はダイオウの入っている三黄瀉心湯がよいでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯
- 柴胡(サイコ)
- 竜骨( リュウコツ)
- 牡蛎(ボレイ)
- 黄ごん(オウゴン)※
- 大黄(ダイオウ)
- 半夏(ハンゲ)
- 人参(ニンジン)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
以上11種類(メーカーによって※を除く10種類)の生薬で構成されています。
精神不安やストレスがあってなかなか寝付けない方や悪夢をみて途中で起きてしまう方に効果的です。
胃腸が弱かったり、体力のない虚証の方には桂枝加竜骨牡蛎湯のほうが適しています。
生活指導
以下のことに気をつけて生活してみましょう。
・睡眠時間にこだわりをもたない。
・就寝前4時間はカフェインを控える。
・眠くなってから床につく。
・寝酒はしない。
・適度に運動をする。
・昼寝は15時前の30分以内に抑える。